平成12年の制度施行以来、定期建物賃貸借(以下「定期借家」とします)の制度もだいぶ浸透して来たでしょうか。
とかく借主側からは嫌がられる定期借家契約ですが、 裏を返せばそれだけ貸主に有利な契約と言えます。
『期間満了をもって確定的に契約が終了し、(法定)更新がない。』
そして何より『契約終了にあたり貸主側の正当事由不要』と言う点が、大きいのではないでしょうか。
当社でも管理ビルのテナントさんで「定期借家」で契約をお願いしているところがいくつかあります。
理由は、「賃料を安く抑えて貸した」か「入居後に問題が起きないか、当初心配があった」のどちらかです。
前者の場合は「再契約」となった時に、条件として賃料を上げやすいことがメリットです。
後者の場合は問題が起きることもなく、良いテナントさんであることがわかれば
「普通」借家契約へ切り替える場合もあります。
(当然、問題のあるテナントさんであれば再契約いたしません。)
貸主有利となると、すべて定期借家に切替たくなるオーナー様もおられるかもしれません。
事業用契約については、貸主・借主双方の合意で切替が可能ですが、
いきなり借主を承諾させるのはハードルが高いことでしょう。
ただ、定期借家はいざという時に、切り札として大いに使えそうです。
ケース①普通借家契約のテナントが賃料減額を申し入れてきたとき
「定期借家への切替を条件に減額を飲んであげる」という交渉はしてみる価値がありそうです。
単に減額だけしてあげた場合、その合意がベースとなるため、
次回更新時に値上げ(元の賃料に戻す)することは困難な場合が多いです。
定期借家に切替えておけば、再契約の条件として賃料も自由に提示できます。
(交渉の中でテナント側も、再契約時の条件が上がりそうなことは当然わかっているはずです。)
ケース②老朽化建物の建替え交渉の場合
建物の建替えでテナントさんに退去してもらう場合「立ち退き料」として、
通常の移転費用(引っ越し代、移転先の契約金など)に加え、
事業用の場合は「営業補償」も必要になってきます。
店の規模にもよりますが、場合によっては相当な出費を覚悟する必要があります。
こうした費用は、退去時に一時金として払うことになるのですが、
「営業補償」などは算定額について中々合意が得られないという事態も想定されます。
そこで、建替え計画が決定した段階(ビルの場合は数年前からになるはずです)で、
更新を迎えたテナントに例えば次のような提案をします。
「建替える予定があるので、あと5年後には退去して欲しい。
そこで、賃料を半額にするので5年の定期借家契約に切り替えて下さい。」
賃料半額(例えばですが)なら考えるテナントも結構多いのではないでしょうか。
オーナー様としては、賃料収入は減りますが、
5年後に立ち退き料不要で確実に退去してもらえるメリットがあります。
建替検討中のオーナー様もおられるので、シュミレーションし、今後ご提案してみようと思います。